ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―

 フラワー・オブ・ライフの曲を録音したCDをもらい、
ミツはすぐにiPodに入れた。
ライブどころか、ミツはまともな撮影をしたことがない。
風景や友人を相手にカメラを回し、
素材をつないで編集したことがあるくらいだ。
ましてや、ライブとなれば一発本番。
ミツにとっては低いハードルではなかったが、
ほとんど白紙で本棚の片隅につっこんであったクロッキー帳は、
ミツのアイディアでどんどんページを埋めていった。

一曲、一曲のイメージを映像におさめるためのアイディアが、
次から次へと思い浮かんだ。
夜には洋二の部屋へ行き、そのアイディアを嬉しそうに話す。

「一曲目のイントロはさ、一番後ろから撮ろうと思うんだ。
ステージが明るくなって、4人のシルエットが浮かび上がって、
洋二の歌が始まるんだ。」

 ミツは鉛筆で画コンテを描きながらミツに話す。
洋二はうなずきながらミツの描き出す鉛筆の線を追う。

「なぁ、全部ライブの映像ってのもいいけど、最終的にPVみたいになったりしない?」
 洋二は画コンテを覗き込んでつぶやいた。
ミツは洋二と目を合わせ、
「それイケるよ!確かに全部ライブの映像でつなげるのは、借りられるカメラの数からいって無理だ!」
 ミツは人差し指を立てた。
「なんだよー、超現実的な問題じゃん!」
 洋二は力が抜けたように宙をあおぐ。
「少ない予算で撮り方を工夫する!これアマチュア映像作家の基本!」
 ミツは鼻の穴を大きくして、誰かの受け売りを口にしてみた。
「なんだよ、ミツ。そんなに真剣にやってたなんて知らなかったぞ。」
「うるさい!・・・おれは、やっと、マジになったの。」
「ふぅん。」

 ミツは再び画コンテに向き合った。
鉛筆が粗い紙の上をすべる音が響く。
「洋二の歌ってるとこ見てさ、マジにいいと思ったから。」
「マジだ。」
「おお、マジだ。わかんねえけど、マジだ。」