大海の一滴


 小さな桜色の二枚貝だった。



 歪なハート型をしているが、何の変哲もない貝殻だ。


 それに、片側だけしか残っていない。



「あ、いや」


 我に返った達之は慌てふためいた。


 何でこんなガラクタを、オレは美和の担任にプレゼントしようとしているのだろう。

 が、次の瞬間。驚き息を呑んだ。






「ありがとう。とても、とても嬉しいわ」






 微笑んだ早瀬先生の頬に、一筋の涙が伝っていた。







                                fin