大海の一滴


 そう言えばあの日、「私も少し飲みたい」と炭酸が苦手な美絵子まで言い出し、大人三人、揃ってメロンソーダを飲んだっけ。


『どうしてかしら。なんだか、とても懐かしい気がするわ』

『私もよ』


 美絵子と秋野さんは、不思議そうにソーダを眺め話していた。


 実は達之も不思議な感覚に囚われていたが、それが何を意味するのか分からず、結局黙っておくことにしたのだ。




「そうだ! わたし、先生とお母さんのために折り紙でお守り作ったの。ちょっと待っててね」
 落ち着き無くばたばたと自分の部屋に走っていく美和に、我に返った達之は苦笑した。

 今日の美和はいつにも増してハイテンションだ。




(お守りか)




 昔は肌身離さずポケットにお守り入れてたっけな。

 お袋がズボンのポケットに隠しポケットを作っていて、丁度こんな風に。

 突っ込んだ達之の指先に、不意に滑らかで固い何かが触れた。



 取り出し、眺めた達之はそれを徐に差し出した。





「これ、あなたに」

「え?」