大海の一滴


 ヒューヒュー。

 みんながニタニタと笑う。黒板に大きな相合傘が書かれていた。



『カズ君&れいちゃん』



「何……これ」



「な~んだ。あん時カズを庇ったのって、そーいうことだったんだ」
 ユウタ君がニタニタ笑う。

「夏川さんって、あんなちびデブと付き合ってるんだ~! お似合いよね~」
「そうそう。夏川さんもぽっちゃりしてるもんね。そう言えば、うちのお母さんが言ってたんだけど、夏川さんのお母さんも昔、ぽっちゃりしてたらしいよ」
「へえ~、そうなんだ~」


 クスクスクス。



 『れいちゃん』から『夏川さん』に呼び名を戻して、まあちゃん達もニタニタ笑った。


「おい、カズ。今のご感想は?」
 顔を赤くしたカズ君は、黙って黒板を消し始める。




(そうか)




 やっと分かった。私は、苛められているのだ。



(耐えてやる)



 元々負けず嫌いだ。こんなことで登校拒否なんか出来ない。

 おばあちゃんに迷惑はかけられない。

 お母さんに溜息を付かれたくない。


 えいと、歯を食いしばる。
 頑張って耐えていれば、そのうち良い方に向かうはずだ。