大海の一滴


「今日も遊びに行かないのかい?」
「うん。そろそろ勉強しっかりしなきゃならないからね」

「れいこは頭がいいんだから、そんなに勉強ばっかりしなくてもいいんじゃないかい」
「そういうわけには行かないよ。お母さん達が外国から帰ってきたら、また前の学校に戻るんだし。とにかく、ご飯まで勉強するから、おやつも二階に持ってきて」
「そうかい」



(おばあちゃん、ごめん)
 一緒におやつ食べてあげたいけど、学校の事とか聞かれたくないんだ。


 れいこは重い足取りで階段を上った。







(今日は、違うグループの子達に話しかけてみよう)

 そうだ。クラスには他にも沢山女子がいるんだから、別にまあちゃん達と無理矢理遊ぶ必要なんて無い。

 れいこは教室内を見回した。

 窓際の席で三人固まっている女子が見える。かよちゃんのグループだ。
いっつも教室の中で絵を描いたりお喋りをしたりで、根暗なイメージがあったから話したことなかったけど、一人で休み時間を過ごすよりマシだ。


「ねえねえ。何してるの?」
 尋ねた途端、三人の目が泳ぐ。

「えっと、私達これから散歩に行こうと思ってて」
「あ、じゃあ私も行こうかな」

「ごめん。三人で行くから」
「ごめんね」
「ごめん」
 みんなが立ち去って行く。



(どうして?)

 頭の中が真っ白になった。

 一瞬、下を向いたかよちゃんが、小声で呟いた。





「れいちゃんと、遊んだら、ダメなんだって。だから、ごめんね」


 胸が、ちくちくする。