大海の一滴


「私が事情を尋ねると、美絵子は『写真を、見つけたの』とだけ話しました。それから、同棲している彼に電話して、今から迎えに来てもらうつもりだけど、彼には飲みすぎが嫌で数日間家出したと話すから合わせて欲しい。その間ずっと家に泊まっていたことにして欲しい。と言いました。その後は、藤川さんも知っての通りです」

(ここに、オレが美絵子を迎えに来た)


「と、いうことは、あの家出の時も、美絵子は……ずっとあなたの家に泊まっていたわけではないのですか?」

「ええ。私が美絵子に会ったのは、藤川さんが美絵子を迎えに来る数時間前でした」


(とすれば、美絵子は……)


「あなたの家に来る以前の行方について、何か美絵子は話していませんでしたか?」

 やっと、手がかりが見つかりそうだとうれしくなる。

 が、それはすぐにしぼんでしまった。




 秋野月子は長くまっすぐな首を、ゆっくりと横へ動かした。


「……そうですか」






「ただ……」

「え?」