俺の心臓は、バクバクと音を立て始めていた。 やっべえ、俺絶対死ぬ。 これ、椎名んとこ行っちゃうの? 俺のにしちゃ、駄目? 「あ、そろそろ行かなきゃ」 鮫島がぽつりと呟く。 鮫島を引き留めようと思った。 「お、行ってこいよ」 なんてことのないように、俺は言う。 本当は引き留めたいけど。 「うん。あ、着付けありがとうございました」 「あらあら、いいのよ。行ってらっしゃい」 おじゃましました、といつもより丁寧にお辞儀をして彼女は玄関に向かった。