下に降りてリビングに向かうと、凪兄がいた。

「あれ? 凪兄、今日朝練?」

「ん? …あぁ。」


水瀬 凪。(Nagi Minase)

私より2つ年上のお兄ちゃんで、星南中のサッカー部キャプテンをしている。


最近は大会が近いらしく、朝はあまり会わない。


「桜にしては起きんの早ぇーな。 …普段は叩いても起きねぇーくせに。 今日は、雨でも降るんじゃねーか?」


凪兄がからかったように言ってきた。


「ひ、ひどっ!! あたしだってたまには早起きくらいするもん!」

「もうすぐ都大会があるんだから、雨降らすなよ」


そう言うと凪兄はいたずらっぽく笑いながら、私の頭をくしゃりと撫でた。


凪兄はイジワルで、いっつ〜もこんな感じだけど…本当は優しい。


「人を雨女みたいに言うなぁ〜!!」

「はい、はい。じゃ、オレもう行くから。……二度寝、すんなよ〜」

「しないもんっっ!!」

「どーだか。…あ、母さんが起きたら伝えておいて。 "今日も帰り遅くなる"って」

「りょーかい。 いってらっしゃ〜い」


私は凪兄を見送ると、リビングに行った。


私の家はお母さんと凪兄…それから、私の3人家族。
…えっ?
"お父さんは?"って?

お父さんは私が赤ちゃんの頃に病気で死んじゃったんだって。


まぁ、お父さんが死んじゃった時、私はまだ赤ちゃんだったらしいから写真でしかお父さんの顔知らないんだけどね。