『君、すごいね!』


まただ。
この夢……。

あれは、忘れもしない6年前の春のことだった。



―6年前


「桜、遅くならないうちに帰って来るのよ」

「はぁ〜い。 行ってきまーす!」


引っ越してきたばかりだった私は、家の近くを探検しに行った。


家を出ると、桜の花びらがどこからかひらひらと飛んできた。


桜の花びらが飛んできた方向を見ると、そこには公園があった。


なんとなくだけど、あの公園がなぜか気になった。


公園に入るとたくさんの桜の木が並んでいた。


風が吹いてきて、桜の花びらが空を舞う。


まるで絵本の世界に入ってしまったような……そんな感じがした。


「わぁ……!」


思わず声が出てしまうほどそれは綺麗だった。


その時だった。

彼と出逢ったのは………。

たくさんある桜の木の中でも一番大きな桜の木の下に、1人の男の子がいた。


男の子は下を向いていて顔は見えなかったけど、なんだか寂しそうに見えた。

太陽の光が反射して顔がよく見えない。

私はその男の子を放っておけなくて、その男の子に声をかけた。


「どうしたの?」

私がそう聞くと、男の子は「何でもないよ…」と小さく答えた。


「…じゃあ、どうしてそんな顔をしているの?」

「…そんな顔って?」

「すごく…寂しそう」

「…そうかな?」

「うん。…あなた、迷子なの? ママとパパは?」

「……。ママとパパは、お空の一番きれいなところにいるんだって。 おばあちゃんが言ってた」


「…そっか。私もパパいないから、半分だけだけど…気持ち分かるよ。寂しいよね」

「………うん」

「あのね、私思うんだけど……。 お空にいるあなたのママとパパは悲しそうな顔をしているよりも、笑顔でいてくれる方が嬉しいと思うの! だから……」

「……ありがとう。 でも、うまく笑えないんだ」

「歌おう! 歌うとね、ここがぽかぽかしてね元気になれるんだよ! ねぇ、一緒に歌おうよ」