十五の詩




 ユリエは主人のいつもの穏やかな眼差しを見て、イレーネの心の壁のことを話しはじめた。

「マスター、これは直接イレーネ様から伺ったわけではありませんが、イレーネ様は幼い頃に理非をわきまえぬ者に暴力をふるわれたことがあるものと思われます。それで男性に対して極度に恐怖心を持ってしまっているのかと」

「なぜそのことが?」

「イレーネ様の手をとった時におぼろげにわかったのです。イレーネ様は怖い夢を見ていたと仰られていましたが、それが心の傷によるものなら、度々そのようなことがあるのではないかと」

「……。暴力をふるわれたことがあるのは事実だと思います」

 ユニスは服をはだけるとユリエに痣を見せた。

「何に見えますか?」

「焼き印…?マスター、これは…」

 どう見ても奴隷に押す、それである。

「同調連鎖が起こってからだんだんはっきりと顕れてきたので…。この型の印はハロンあたりのものだと思うのですが」

「ハロン…。では、イレーネ様は…」

 前にユニスがイレーネの気はハロンのものではないかと言っていたが──。

「私からイレーネに訊いてみます」

「マスター…。イレーネ様は表向きは凛々しくあられますが、内面は少女です。肉体的な意味でもそうですが、精神的にもいきなり踏み込むことはなさいませんよう」

 ユニスは困ったようにため息をついた。

「……。傷つけないように愛するのは難しいです」

 先刻のイレーネの素直さがまだ胸に響いていた。あんなに無垢な「大好き」を言われたのは初めてだ。本当に愛しいと思った。

 でもその感情が行き過ぎてしまうのが怖くもある。それでイレーネを傷つけてしまったら──。

「ユリエは女性の気持ちの方がよくわかりますか?」

 ふと気になってユニスはユリエに尋ねた。ユリエは少し考えて答えた。

「マスターの感覚に近い男性なら男性の気持ちもわかりますし、イレーネ様の感覚に近い女性なら女性の気持ちもわかります」