十五の詩




 ほっとしたのか、その後イレーネはうとうととし始めた。

 本当にユニスのことが好きなのだ、と思う。

 信頼していなければイレーネのこの寝顔はありえないだろう。

 イレーネの状態が安定するようしばらく白魔法を行使させていたが、かなり落ち着いてくるとユリエは静かに立ち上がった。

(イレーネ様は男性に対して強い不信感がある──)

 心の中にある壁を感じて、憂える。

 その壁があるということはユニスが好きなこととは矛盾した感情になってしまうのだが、そこまで一致させられるほどにイレーネの心身がまだ大人には成りきれないのだろう。

 だがそこはあえて口出しすべきことではないだろうと判断した。

 それはユニスとイレーネとの間にあるべきことで、他の者が干渉することではない──。

 折よくイレーネの様子を伺いに部屋に訪れたアメリアにイレーネが良くなったことを告げると、ユリエは主人のもとへ向かった。



     *



 ユリエが寮の部屋に帰ってきた時、ユニスはまだ起きていた。

「──マスター、早くお休みくださいと申し上げましたのに」

「……」

 ユニスは机に向かい、手紙を書いているようだ。別のことに身を置いていないと律することが出来ないような雰囲気になってしまっている。

 これだけ動揺している主人を見ることもそう多くはない。

 ユリエは「大丈夫ですか?」と声をかけてみる。

 ユニスは「はい」と答えると、ペンを置き、ユリエの方に向き直った。

「イレーネは?」

「だいぶ良くなりました。家の者に少し伺いましたらイレーネ様は家に帰ってきてからも剣や槍を手にとっておられることが多いのだとか」

「……」

「最近では何かから逃れるようにひたすら鍛練を重ねているのを見て、このまま倒れてしまわないかと家の者も心配になっていたそうです」

「…そうですか」

 ユニスの表情が落ち着いたものになった。

「ありがとう、ユリエ」