本当はユニス自身がすぐにでもイレーネのもとに行きたいのだろうに──。
ユリエは「わかりました」と答えた。
「私がイレーネ様をお守り致しますので、ご安心なさってください。マスターもご無理をなさらぬよう。今日は早くお休みくださいませ」
ユリエはそう告げると、イレーネのもとへ飛んだ。
窓から舞い込む夜風がいつになく優しい──。
コト、と音がしてアメリアはテラスの方を見た。
柔らかく揺れる、半透明のカーテンの向こうに広がるほのかな光──。
「──」
アメリアは息をのんで、そこに釘付けになった。
夜風にたなびく淡い紫の髪に白衣を纏った少女が、ふわりとした光に包まれ立っているのだ。
「お倒れになっている方がいらっしゃいますね?」
少女が問いかける。
アメリアは半分夢だろうかと思いながら「はい」と答えた。
少女は音も立てずすっと部屋に入ってきた。
「あの──」
この尋常ならざる現れ方は…。
しかし不思議とその少女にアメリアは不信感を抱けずにいた。
少女はアメリアのそばまで歩み寄ってくると一礼をした。
「私はイレーネ様を知る精霊です。イレーネ様がお倒れになっていることを感じとり、案じて参りました。どうか良くなるまでそばにいることをお許しを」
「──はい…」
精霊と聞いてアメリアは少しほっとする。
ベッドで眠っているイレーネの方を見ると、イレーネが話し声に気づいたのか目を開けた。
「アメリア…?」
「ああ…お嬢様」
「となりにいるのは…?」
そういえば初めてイレーネと会話をした時は、この姿ではなかったのだ。
ユリエはほほえんだ。
「リスの身体を借りていた者です、イレーネ様」
「リス…?──あ…」
ユリエ?とイレーネが答えた。ユリエは「はい」と頷く。どうやらふたりは顔見知りのようだ。


