十五の詩




 帰りが遅くなったからだろう。誰もいないシャワー室にユニスはほっとした。

 シャワーを浴びて身体を拭いていると、鎖骨のあたりに軽い痛みを感じた。

(何──?)

 鏡に映る自分を見て、ユニスは変な感覚に捕らわれる。…こんな痣、あっただろうか?





 すると、今度ははっきりと全身に激痛が走った。身体ごと叩きつけられるように。

「……っ」

 鏡で見た痣の部分が焼けつくように痛み、ユニスはその場にうずくまった。





『──…すけて』





 声?

 弱くて聴こえない。





『たすけて』





 ──聴こえた。





「イレーネ…?」

 ユニスは痛みが通り過ぎるのを待って、ユリエを呼ぶ。

「ユリエ」

 眠っていたユリエはすぐに現れた。

「どうなさいました、マスター。──マスター!?」

「私ではありません。それよりイレーネが……」

 ──イレーネの悲鳴がこだまのように響いていた。



(同調連鎖だ)

 感覚の強いユニスに、それは度々あることだった。

 自分のものではない他者の心身の状態を感知して、一時的に同じ状態になったりしてしまうことである。

 他者の心身が危うい時にそれをキャッチすることが多いのだが、それで自らも痛みを伴うのは避けられない。

 だが、イレーネのことを案じていたユニスにとっては、イレーネの心身の状態がわかるというのは、その時に護りようがあるという意味でいいことだった。

「ユリエ、イレーネのところへ行ってください」

「マスター…。マスターが行かれた方がよろしいのでは?その方がイレーネ様は安心なさると思います」

「こんな時間に許婚者でもない者が訪れたら、疑われるのはイレーネです。これ以上精神的負担をかけたくはありません。精霊なら、よほどのことがない限り疑われません」

 精霊は危機に瀕している者に、分け隔てなく憐れみ深いからである。