十五の詩




 ユニスとヴィンセントは顔を見合わせる。ヴィンセントが軽く息をついた。

「──レナート」

「んー何?」

「俺が許婚者だ」

「……。へっ?」

 レナートはぽかんと口を開け、ユニスとヴィンセントとを交互に見る。

 ヴィンセントがイレーネの許婚者で、ユニスがイレーネに告白──?

「ええぇぇぇえ!?」

「静かにしろ」

「──あい」

 レナートはわけがわからず、混乱気味だ。

 ユニスが口を開いた。

「イレーネを好きになったのは、最近いろいろあったので。初めて会ったのは楽譜を拾った時なのですが」

「本当に最近だ」

「はい」

 ヴィンセントが真面目な表情で言った。

「レナート。お前にもこの事を話したのは、もしお前がイレーネを本当に好きだったらと思ったからだ。先にユニスに話しているのは別に理由があったからだが──ユニスがその後イレーネを好きになったのなら、お前にも話した方がいいと思った」

「──」

 レナートはめずらしくひどく落ち込んだ様子になった。

「ショック…。こんなことって本当にあるんだ」

「俺は家の事情で許婚者になっただけの話だ。イレーネが傷つけられないように守るのは俺の役目でもある。だがお前とユニスが本気なら俺は俺でそのことで考えてもいい気持ちはある」

「ヴィンセントはイレーネが好きじゃないの?」

「妹のように見ている感じだな。許婚者であるということと好きであるということは、必ずしも一致はしない」

「……。そっか…」

 ユニスはレナートを見て胸が痛んだ。イレーネに「好きでいてもいいのなら」と言われたことを話そうか迷っていた。

 ユニスの表情を察したのか、ヴィンセントがレナートに訊いた。

「もし、イレーネがユニスを選んだらどうする?」

「──どうするって…」

 レナートはユニスの優しげな姿を目にして、むしろイレーネがユニスのそばに並んでいることの方が自然なような気がした。