十五の詩




 帰って来てから庭で剣の練習をしていたイレーネだったが、何故か気分が晴れなかった。

(ダメだ…。ユニスのことが気になってる)

 何故こんなに気になっているのか──。



 その時、メイドのアメリアがイレーネの名を呼びながら走ってきた。

「お嬢様。ああ、こんなところに」

「どうしたの?」

「お電話が」

「電話…?誰から?」

「ユニスと仰られていましたが」

「──え?」

 イレーネはあまりのことにそれまでの考えていたことがすべて真っ白になる。

「ユニス…?」

「はい。フェセーユの神童だとか呼ばれている方ですよね?」

 イレーネは急いで家に駆け込むと、電話に出た。

「──ユニス?」

『ああ、イレーネ』

「どうしたの?」

『伺いたいことがあったので。スフィルウィング家では弓を扱う者は雇っていますか?』

「弓?──そうだね…。剣や槍を扱う者は多くいる。弓に長けた者はいないと思う」

『ひとり、女性で弓使いの者がいるのですが…あなたの家に住まわせることは出来ませんか?』

「どれくらいの弓を使えるかにもよると思うけど…」

『弓で生計を立てていたらしいのですが』

「それくらいの腕なら、教えてもらいたい者が多いと思う」

『そうですか…。では、後日スフィルウィング家当主のグレイス様にその件でお話に伺いますね』

 ユニスの語調はとても穏やかだ。でもその時のイレーネにはそれが何となく淋しかった。自分だけの心が波立っているようで。

「その女性って、先刻一緒に歩いていた人…?」

 思わずそう言葉になってしまっていた。

『ええ。見ていらしたんですか?』

「うん。帰りの車の中にいる時に見かけた。可愛い人だね」

 イレーネの語る言葉の纏う淋しさに気づいたのだろうか。ユニスがしばし沈黙した。

『イレーネ』

「何?」

『何かありましたか?』

 優しい声。胸が詰まる。