ルナは深呼吸をひとつすると、ユニスの方に近寄って行った。
「すみません。聞きたいことが。ユニスという方は…?」
ユニスは少女に話しかけられ、我に返ったようだった。
「あ…はい。私です」
「良かった。少しお話したいことがあるんです。これから何かご予定は?」
「いえ。今日の講義は終わったので」
ユニスは突然のことに驚いたが、傍らにいるレナートに手に持っていた本とノートとを渡した。
「すみません、レナート。私の部屋に置いてきてもらえませんか?ノートは借りて構わないので」
「…はーい」
レナートも予想だにしていなかった事態に気の抜けた返事をしている。
ユニスはルナの手を取った。
「──話しやすいところに行きましょうか」
「ええ」
(心得ている人だわ)
ルナはほっとした笑みを浮かべた。
ユニスと並んで歩き始めたはいいものの、ルナは街の人たちの装いに比べ、自分がひどく場違いな服を着ている気がして、急に恥ずかしくなった。
「あの…」
「はい」
「私の服、浮いていませんか?」
ユニスはルナの表情を窺い「それなら服を買いに行きましょうか」と優しい声で言った。
ルナは赤くなる。
「あの…私」
ユニスはルナにその言葉の最後までを言わせなかった。
「私がエスコートしますので、あなたは何も心配しなくても大丈夫です」
(お…王子…)
どんな教育を受けたらこういうふうに育つのだろうか?
申し訳ないやら恥ずかしいやらでルナは内心ぐるぐるになっていたが、ユニスの好意を素直に受けることにした。
「私…フォーヌから来たんです。本当に着の身着の儘で」
「そうですか」
「名前はルナ・シルフォーネ。──そういえば、名前は何とお呼びしたら?」
「ユニスでいいです」


