「──ここだ」
男はルナをある学校の寮らしい建物の前まで連れてきた。
「こんなところに…?」
「学生寮だが、昼間なら寮監に断れば寮生に会えるはずだ」
「誰に会えばいいの?」
男はお前の手にある写真だ、と目で合図を送った。
「え?ユ、ユニス様?」
「敬称はつけるな。家の名前も出すな」
「え、ええ。わかったわ」
「なら俺はここまでだ。…ああ、一つお前に仕事だ」
「何?」
「その人物に俺がアレクメスにいると伝えろ」
「待って。あなたの名前、まだ聞いていないわ」
「──リュール」
その時、ひとりの寮生の声が響き渡った。
「ユーニー!後で数学のノート貸してー!」
栗色の髪の少年が走ってゆく。その先に──。
肩で切り揃えられた金の髪の少年が振り返った。
ルナとリュールはその姿を目にする。写真のその人物だ。
ユニスの方もルナとリュールを見た。
お互いに凝視する瞬間。
──時が止まった。
「ユーニー?」
レナートはユニスが自分ではなく別の誰かを見ているのを感じとり、その視線の先をたどる。
フェセーユの制服を着た生徒が行き交う中、明らかに目立っている金髪の美少女と黒髪の美少年。
少女は狩りに出た時のままの装いで美しく締まった脚が見える。
少年の方はすらりと背が高く黒が基調の騎士服に身を包み、マントを羽織っている。
劇的なばかりのふたりの佇まいにレナートは「わお…」と見とれ、隣にいるユニスの美貌と交互に見比べた。
「ユーニーの知り合い?友達?」
「──」
ユニスはレナートの声が聞こえていないのか、呆然と立ち尽くしたままだ。
(父上──)
ユニスが黒髪の少年の面差しに見ていたものは、亡き父の面影だった。
リュールはユニスのその視線を一顧だにせず、ルナに言った。
「丁度良かったな」
「あ…」
もう既に踵を返して歩き始めているリュールの背にルナは礼を言った。
「ありがとう、リュール」


