十五の詩




「──ここだ」

 男はルナをある学校の寮らしい建物の前まで連れてきた。

「こんなところに…?」

「学生寮だが、昼間なら寮監に断れば寮生に会えるはずだ」

「誰に会えばいいの?」

 男はお前の手にある写真だ、と目で合図を送った。

「え?ユ、ユニス様?」

「敬称はつけるな。家の名前も出すな」

「え、ええ。わかったわ」

「なら俺はここまでだ。…ああ、一つお前に仕事だ」

「何?」

「その人物に俺がアレクメスにいると伝えろ」

「待って。あなたの名前、まだ聞いていないわ」

「──リュール」



 その時、ひとりの寮生の声が響き渡った。

「ユーニー!後で数学のノート貸してー!」

 栗色の髪の少年が走ってゆく。その先に──。

 肩で切り揃えられた金の髪の少年が振り返った。

 ルナとリュールはその姿を目にする。写真のその人物だ。

 ユニスの方もルナとリュールを見た。

 お互いに凝視する瞬間。



 ──時が止まった。



「ユーニー?」

 レナートはユニスが自分ではなく別の誰かを見ているのを感じとり、その視線の先をたどる。

 フェセーユの制服を着た生徒が行き交う中、明らかに目立っている金髪の美少女と黒髪の美少年。

 少女は狩りに出た時のままの装いで美しく締まった脚が見える。

 少年の方はすらりと背が高く黒が基調の騎士服に身を包み、マントを羽織っている。

 劇的なばかりのふたりの佇まいにレナートは「わお…」と見とれ、隣にいるユニスの美貌と交互に見比べた。

「ユーニーの知り合い?友達?」

「──」

 ユニスはレナートの声が聞こえていないのか、呆然と立ち尽くしたままだ。

(父上──)

 ユニスが黒髪の少年の面差しに見ていたものは、亡き父の面影だった。

 リュールはユニスのその視線を一顧だにせず、ルナに言った。

「丁度良かったな」

「あ…」

 もう既に踵を返して歩き始めているリュールの背にルナは礼を言った。

「ありがとう、リュール」