十五の詩




「ないわ。今日の今日までフォーヌで暮らしてきたんだもの」

「なら、リオピアよりもアレクメスに行け。リオピアはお前のような髪の色の者には、つらいだろう。大戦後のリオピアは他国の者にそれではなくとも警戒心を持っている」

「でも私に海を越えるほどの力なんてないわ。お金も持ってないの。かろうじて可能かもしれないのがリオピアまで飛べるかということくらいなんだもの」

「──乗れ」

「え?」

「飛龍ならアレクメスなんてすぐだ。俺はアレクメスに帰るところだった」

「リオピアの人間ではなかったの?」

「リオピアの人間がアレクメスで暮らしていたら悪いか?」

 願ってもない幸運。ルナは笑った。

「全然悪くないわ」

 ルナは飛龍に乗り、ふり落とされないように男に身を寄せた。

「物怖じしない女だな」

 ルナの身体を片手で抱きながら男が苦笑する。

 ルナはさらりと言った。

「死んだ気になれば何だって出来るわ」



 男の話した通りアレクメスはすぐだった。

 ルナの想像では一日、或いはもっとかかるものと思ったのだが、飛龍にはある一定空間をワープ出来る能力があるらしい。

 一時間後にはアレクメスの首都ハリスモンドが見えてきた。

「すごいわ」

 フォーヌとはまったく違う洗練された街並み。ルナは目を輝かせる。

 男はルナの表情を見て、満足そうに言った。

「そろそろ飛龍から降りる。後は歩きだ」

「何処かへ行くの?」

「その分だとアレクメスにもあてがないんだろう。お前がこうなった状況を説明すれば、住むところを手配してくれそうな奴ならひとりだけいる」

「どういうことなの?」

「ついて来ればわかる」

 ここまで来るとついて行かないわけにも行かない。本当にアレクメスに連れて来てもらえただけでも、この男は恩人である。

 しかし男は別段そういう店などにルナを売り飛ばそうという気配も見えない。ハリスモンドの街の表街道を歩いてゆく。