十五の詩




 待てという男たちの声にルナは一切耳を貸さなかった。

 万が一の時のためにと母から譲り受けた薬は、恐ろしいほどよく効いた。

 飛空魔法まで使えるようになっており、ルナは徐々に飛空魔法に身体を馴らしながらスピードを上げた。

 ルナが迷わず目指したのは国境だった。

 魔導士狩りは減っていると聞く。以前よりも落ち着いてはいるだろう。

 リオピアに入れば少なくともフォーヌの軍人が好き勝手は出来ない。

 こんな国に身体を売るくらいなら、リオピアで国籍を認められるまで働いた方がまだましだ。



 ──と、空に黒い点が見えた。

 近づいてくるにつれ、それが飛龍だとわかった。

(龍なんて本当にいるんだわ)

 初めて見る生き物にルナは先を進むのをやめ、近づいてくる飛龍を見つめた。

 飛龍の背にはひとりの男が乗っていた。男もルナが見ていることに気づくと、すぐ近くまで来て話しかけてきた。

「何処に行く?こんなところで何をしている」

 風に散らされる艶やかな黒髪と銀色の瞳、整った顔立ち。おそらくリオピアの人間だ。

 ルナはほっとして男に答えた。

「リオピアに行きたいの」

「行ってどうする。お前はフォーヌの人間か?国境付近には近づかない方がいい。以前よりも落ち着いたとはいえ、ならず者もまだ多く横行している。見たところ魔導士狩りに手を染めている人間ではなさそうだが──」

「そんなもの興味ないわ。私はただ人間として生きたいだけ。何年か辛抱して働いてリオピアの国籍が取れるなら、それでいいの」

「──」

「あなたはリオピアの人間?」

「そうだ」

「確認したいことがあるの。この写真の人物は、ユニス様ご本人かしら?」

 ルナは写真を見せた。男はそれを見て、目を瞠る。

「これを何処で?」

「私を薬づけにしようとしたバカが落としたものを拾ったの。ユニス様なのね?」

 沈黙が返答だった。男はルナに尋ねた。

「リオピアに行ってあてはあるのか」