ルナは暖炉の前の肘掛け椅子に座っている母の姿を見つけ、走り寄る。
そして幾らも経たないうちに青ざめて、ふらりと後ろに引いた。
(死んでる)
ただ眠っているだけのように見える母の顔色は死人のそれで、もう冷たくなっていた。
「お前がルナか」
ふと声がして、ルナは母の背後から歩いてくるふたりの男を見た。国の軍服を着ている。
ルナは母親から離れ、緊張した面持ちで後ずさりしながら、家の裏口の戸に手をかける。
「使えそうか?」
「金髪碧眼…似ていないことはないな。顔もいい」
男たちは一枚の写真を手にしながら勝手に話を進めている。
ルナは鎌を掛けてみた。
「エスターの言っていた仕事?」
男たちの目がルナに注がれた。
「話を聞いているのか」
「──少しだけ」
「なら話は早い。ユニス・セレクヴィーネになる気はないか?」
「…何を言っているの?」
「言葉の通りだ。うまくすればお前は一国の王だ」
男たちは至極まともな話をしているつもりのようだったが、ルナには笑止この上なかった。
それで私を薬づけにして紛い物のユニス・セレクヴィーネに仕立てるつもりなのだ。
国の軍人がこんな話をしているようではこの国も終わっている。
──どこまでバカなんだろう。
ルナは首からかけていたペンダントを引きちぎり、ペンダントのトップにしていた小瓶の詮を抜いた。
その中身を一気に飲み干す。
(お母さん…。力を貸して!)
男たちが薬だと気づき、動揺する。
「お、おい…!」
「貴様…撃つぞ!おとなしくしろ!」
ルナはしらっとした表情で男たちの方に歩み寄って来る。
何発かの銃弾がルナに向かって撃たれたが、まったく効かない。
護力の高い薬のようだ。
男たちが銃を構えた時に落とした写真をルナは拾い上げた。
悠然と微笑む。
「これがリオピアの王子…。ありがとう。いいことを教えてもらったわ」


