十五の詩




 ルナは暖炉の前の肘掛け椅子に座っている母の姿を見つけ、走り寄る。

 そして幾らも経たないうちに青ざめて、ふらりと後ろに引いた。

(死んでる)

 ただ眠っているだけのように見える母の顔色は死人のそれで、もう冷たくなっていた。

「お前がルナか」

 ふと声がして、ルナは母の背後から歩いてくるふたりの男を見た。国の軍服を着ている。

 ルナは母親から離れ、緊張した面持ちで後ずさりしながら、家の裏口の戸に手をかける。

「使えそうか?」

「金髪碧眼…似ていないことはないな。顔もいい」

 男たちは一枚の写真を手にしながら勝手に話を進めている。

 ルナは鎌を掛けてみた。

「エスターの言っていた仕事?」

 男たちの目がルナに注がれた。

「話を聞いているのか」

「──少しだけ」

「なら話は早い。ユニス・セレクヴィーネになる気はないか?」

「…何を言っているの?」

「言葉の通りだ。うまくすればお前は一国の王だ」

 男たちは至極まともな話をしているつもりのようだったが、ルナには笑止この上なかった。

 それで私を薬づけにして紛い物のユニス・セレクヴィーネに仕立てるつもりなのだ。

 国の軍人がこんな話をしているようではこの国も終わっている。

 ──どこまでバカなんだろう。

 ルナは首からかけていたペンダントを引きちぎり、ペンダントのトップにしていた小瓶の詮を抜いた。

 その中身を一気に飲み干す。

(お母さん…。力を貸して!)

 男たちが薬だと気づき、動揺する。

「お、おい…!」

「貴様…撃つぞ!おとなしくしろ!」

 ルナはしらっとした表情で男たちの方に歩み寄って来る。

 何発かの銃弾がルナに向かって撃たれたが、まったく効かない。

 護力の高い薬のようだ。

 男たちが銃を構えた時に落とした写真をルナは拾い上げた。

 悠然と微笑む。

「これがリオピアの王子…。ありがとう。いいことを教えてもらったわ」