十五の詩




「何だと?」

「魔力なんかむやみやたらに使うもんじゃないって、言ったじゃない!軍事力だ防衛力だって国の幹部は騒ぐけど、だいたいリオピアがフォーヌを攻めてくるなんて発想がおかしいわ!あんなの、リオピアのものを欲しがっているバカたちが侵略する理由が欲しくて情報を捏造しているだけよ!リオピアはフォーヌなんか侵略しなくたって、生きていける国だわ!それどころか、この国の国王よりもフィノ様やノール様の方が、私たちのことを考えていてくださっているもの!」

「あんなババアの言うことを信じるのか」

 ババアというのはルナとエスターの母親のことである。

 エスターの魔法能力は母親譲りで、ルナも多少は魔法が使える。

 高い魔力を持って生まれたエスターの方が、能力を生かせずこうなってしまっているのは、皮肉ではあるが。

 ルナは淡々と言った。

「少なくとも妹に手をかけるようなバカよりかは信じられるわ」

「そうか」

 エスターの低い声が答え瞳が剣呑な光を帯びた。

 ざわりと異様な気が立ち込め始める。

(──まずい)

 本能的に危険だと感じたルナは駆け出した。

 少女とは思えない敏捷さで岩場を駆け登り、下りを繰り返して、ルートを読まれないよう進んで行く。

「ふ…逃げられると思うのか!」

 対してエスターは飛空魔法を行使する。しかし、ルナの逃げ足と、身体が魔力に侵されているエスターが追う速さはほぼ互角。

 やがてエスターの身体が魔力の行使に耐えられなくなり、ふたりの距離が開き始めた。

 ルナは振り返らない。エスターに対する情を完全に捨て去って行くように、家までの道のりを走った。

「──お母さん!」

 バン、と乱暴に扉を開けルナは家に駆け込んだ。

 あんな兄が帰って来るような家にはもう住んではいられない。逃げなくては。

 このままでは母も自分も殺されてしまう──!