十五の詩




(──獲物がいない)

 昨日とは違うルートで山野を歩き回りルナはやりきれない気持ちになった。

 幸い山菜は取れるがやはり動物の肉がないと厳しい。手に持つ弓はもう何日も獲物を射ていない。

「あの男が変な薬なんか使うからだわ」

 野生の動物は敏感だ。これほどまでにさっぱり姿も見せなくなると、やはり生き物に害を及ぼすやばいものだったに違いない。

 バカ兄貴、と憎々しげに呟いて、ルナは諦めて元来た道を戻ろうとした。

「──!!」

「よお、ルナ」

 いつからつけて来ていたのか、そこには今しがたルナがバカ兄貴と吐き捨てた人物──エスター・シルフォーネが立っていた。

 何がおかしいのかニヤニヤ笑っている。

 ルナはにべもなく軽蔑した表情で言った。

「何してるの?暇なら稼ぎになるようなことでもしてきたら?」

「冷たいなぁ、お前。顔は可愛いのによ」

 酔っ払いのようなデレデレとした喋り。完全にイってしまっている。

 元々エスターはそれなりに出来た人物だった。だがいかんせん、フォーヌは国が貧しい。

 魔導士の位までとったはいいものの、手っ取り早く金になるような仕事は魔導士狩りくらいしかなく、それで稼ぎを得たり、自分の魔力を薬に換えたりしているうちに、だんだん精神を病むようになり、今のエスターになっていったのである。

 酔っているように見えるのは、酒を飲んでいるからではない。魔力や薬の使い過ぎによるものである。

「なぁ、ルナ。すごく金になる話があるんだけど」

「何?」

「お前だよ」

 言うなり、エスターが詰め寄りルナの首に手をかけた。

「ぐ…っ」

 ルナはエスターの横っ面に肘を喰らわせると、さらに足でエスターを蹴り飛ばし、その腕から逃れる。

 普段から山野を駆け巡っているルナのそれをまともに喰らい、エスターは転がった。

 呼吸を整えながら、ルナは心底落胆したように激昂した。

「最低だわ!あんたなんか男じゃない!」