十五の詩




 ユニスが大戦の終結後もすぐにリオピアには戻らなかったのは、ユリウスの命でもある。

 ユニスはまだ幼い、他国の者どころか宮廷でさえ命を狙う者も欺く者もあろう、ならば己の力と他者の力を見極めるまでは他国で学ばせよ、とノールに命じたのである。

 そのユリウスの考えを伝えた時のユニスを、ノールは忘れることが出来ない。

 そのような考えを聞かされるというのは──父王が死を覚悟してそう言っているのだということと同じだったからである。

「──そうか。フィノ様は難しいか」

「可能性としてはないわけではありませんが。まだ大戦の傷が残っている今は、他国との婚姻を考えるのは時期が早すぎます。ユニス様のお考えもありますから。そうではなくとももう既に宮廷内では時期王妃の話で騒がしい者たちがいます」

「王子がリオピアにも戻らないうちからか?」

「そんなものです。ユニス様を出来るだけ傷つけないよう、手紙でそのことを伝えてはおきましたが」

 イアンは嘆息した。

「やれやれ。何だかお前さんやら王子やらが背負うものだけ背負っている気がするのは俺だけか?」

「──私はそんなことはありません。ユニス様が気の毒になることは多々ありますが」

「そうか。…ああ、そうだ。忘れていた」

「何ですか?」

「王子から手紙を預かっていた」

 そう言って手紙を差し出した。ノールの表情に笑みがこぼれる。

「ありがとうございます」

 イアンもそれを見届けて満足そうに笑った。

「そういえば、王子が気になることを言っていたな」

「気になること?」

「先日、リュール様を見かけたらしい」

「──」

 ノールが息を呑む。



 リュール・セレクヴィーネ。セレクヴィーネ王家の第二王子。ユニスの弟である。



     *