十五の詩




 イレーネの表情は鋭い。もはや少女ではなく騎士のそれだ。

 手に馴染んだ槍を軽く一振りすると、構えた。

「──ああ?なんだ小娘?」

 ひとりが鼻で笑う。横から仲間の男が狼狽して、腕を掴んで止める。

「お、おい、バカ。イレーネ・スフィルウィングだぜ」

「ああ?」

 その言葉を聞いて男はゲラゲラ笑いだした。

「はぁん?イレーネ・スフィルウィングね。確かに噂されるだけはあるな。リオピアの王子とスフィルウィング家のご令嬢がいっぺんに顔を揃えてるなんて、どんな幸運だ?これをお持ち帰りしたら俺らは一生遊んで暮らせるぜ?」

「不運の間違いではないのか?」

 馬に乗っていたと思っていたイレーネの声が、間近に響いた。いつのまに間合いを詰められたのか──。

 喉元スレスレに槍の切っ先を突きつけられ、男は初めて背筋が寒くなる思いをした。

「かっ切るぞ」

「こ…この…女…!!」

 このこなれた動きはただのつくりものではない。華奢な容貌を見てなめてかかっていた男は、イレーネの実力がどれくらいのものであるのかを理解したようだった。

「立ち去れ」

 イレーネの腕に加え、すぐそこにはユニスもいる。ここでスフィルウィング家お抱えのSPにでも動かれたらたまったものではない。

 最初からイレーネの実力を見抜いていたらしい男が「俺は降りる」と呟き、その場を去った。他の男たちも既に襲う気を無くしている。

「くそ…!!」

 笑っていた男は憎々しげにイレーネを睨みつけ、らんらんとした目で笑った。

「覚えてろ、女。次に会う時は今のお前はないと思え」

 男たちは去り、イレーネとユニスだけがその場に残された。

 イレーネがほっとしたようにユニスを見る。

「大丈夫か、ユニス」

 気力だけで立っていたかのように、ユニスの身体がその場に崩れこんだ。

「ユニス!?ユニス!!」

 イレーネの声がだんだんと遠ざかり、そのまま意識を失った。