十五の詩




 ノールの生家は、ノールが生まれた当時はその地では裕福な方だった。

 葡萄園とワイナリーとを持っており、いちばん上の兄などはノールが生まれる頃には成人していて、2番目3番目の兄たちもそれぞれの畑を任されるほどには大きかった。

 だが、いちばん上の兄がつき合っていた女性の家が同じようにワイナリーを持っており、兄とその女性との間に確執はなかったが、ワイナリーの味の争いや経営争いで水面下では複雑に物事が動いていたのである。

 恋人の女性は生家のことも大事に思っていたが、彼の家の守る味も気に入っていたから、彼のところに行くからと両親に話したのだが、わかってはもらえなかったのだ。

 商売敵の家の者とつき合っていることが家の者に知られてしまった彼女は、両家の者からそれぞれの事情を相手の家の者に教えるのではないかと疑われてしまう。また、それはノールの兄の方もそうであった。

 両家の親はふたりにしきりに別れろと言い出した。

 が、ふたりがそんなつもりでつき合っているわけではなく、たんに好きになってしまっただけだというのを間近に見ていた次男坊が、家の問題でそんなにもめるなら、ふたりにお互いの家を離れ、独立してみたらどうだと提案したのである。

 長兄は親に話しても許してもらえるどころか、余計に疑われたり反対されることがわかっていたので、「遠くに行こう」と彼女に話した。

 彼女もついていくことを嫌がらなかった。

 そうしたある日、ふたりは忽然と行方を眩ましてしまったのである。

 ノールの父親は探しても無駄だと悟ったのか長兄を探すようなことはしなかった。相手方の娘の家の方もそうだった。

 幸い兄弟が多かったので、長兄ひとりがいなくなっても何とか補って行けはしたが、やがて父親は長兄のこととは関係のないノールに感情をぶつけるようになった。

「あれが生まれてからだ。あれが生まれてからあいつはおかしくなったんだ」