十五の詩




 私室に戻ってきたユニスは、長椅子に座り、ノールを呼んだ。

「ノール。来て」

 侍女のアイシャを呼ぶ時のような柔らかい表情で言われ、ノールは戸惑った。

「ユニス様」

「ノールも疲れたでしょう?」

 ノールはこのままユニスの私室にいてもいいものか迷ったが、心を決めた。

 ユリウスからの命があり、ユニスのそばで仕える役目を受けた以上、自分の守るべきものはユニスだ。

 ノールはユニスのそばに歩み寄り、傍らに座した。ユニスはほっとしたようにノールに身を寄せた。

「ユニス様…」

「ノールも眠る?」

 ノールは困ったように、だが、愛しいような思いでユニスを見つめた。

「私がユニス様のお部屋で眠ったりするともなれば、他の者に知れたりでもすれば、何をしているのだとお咎めを受けます」

「アイシャは眠ってくれるのに?」

 それは、アイシャはユニスを寝かしつけなければならない役目も担っているだろうから、そういうこともあるかもしれないが。

「アイシャ様は…そういうお役目を任されている方ですから」

 ユニスは寂しそうな表情になった。

 ノールはユニスが本が好きであると知っていたので「本をお読みしましょうか」と尋ねた。

 が、ユニスは首を振った。

「ノールのお話がいい」

「私の…ですか?」

 ノールは口ごもる。

 感受性が強く聡い子だとは言っても、ユニスの年齢で他者の話をすっと受け止められるのだろうか──。

 だが、ノールはこれはユニスに受け入れてもらえるきっかけだ、と思った。

「生まれたところは──農村です。兄弟は七名いました。私は末の子として生まれました」

「七人も?」

 数を習い始めていたユニスはその数字に驚いた。ノールは優しく笑った。

「多いですか?」

 ユニスはすぐには七人兄弟という感覚が想像出来ずに、瞬きした。

「リュールと、他にも…?」

 自分のことに置き換えて理解しようとしているようだ。

「そうです。ユニス様は長子であられますね。リュール様がふたりめの王子。ユニス様とリュール様の他にもあと五人いるようなものです」