十五の詩




「大水、大風、地の揺れは、この声と龍騎士と繋がっているのですか?」

 ノールの言葉が、それまでに感じた様々なものと繋がっているようにユニスは感じた。ノールは「そうです」と答える。

「自然の災厄があり、失われるものがあり、人の世の動乱が起こる。そうして罪人と定められた者が咎められる」

 ノールは断定的に「罪人」という言い方にはしなかった。「罪人」と定められはしても実のところでは罪人ではない──ドミナントのように──そういう者がいると感じているからこその言葉だった。

 それまで口を結んでいたセイザーが、ノールとユニスに声をかけた。

「礎に聴くという言葉を知らないか。この世界にはまだ誰も姿を見たことはない龍が眠っているという。龍は幻想と現実との狭間にいる。その礎に無理矢理に人の力を介入させようとする者がいる。龍の怒りを侮ってはならぬ」

 ノールはセイザーの面差しを見た。

「あなたがたが言っていることは、端的にこの国に起こっていることというより、もっと大きなことのように聴こえます」

 セイザーは大きなものが見えていてそう言っているわけではなかったが、龍騎士として感じているものが確かにあるということを言葉にした。

「もしかしたら、そうなのだろう。龍と共にしている時が長いと自ずとわかってくるものもある」

「もしかしたら、というのは、確かなことはわからないということですか?」

「そうだ。わかっていたら、とうにその人間は世界を支配しているだろう」

 それまで無言で聴いていたファスティーナが辺りを見回した。

「ユニス、ノール、細かな話は王宮に戻ってからにしましょう。良くない気が増幅しています。長くここにいるのは」

 ノールもファスティーナの同意見のようだった。

「私もそのように感じます。ユニス様、王宮で彼と話す場を持ちましょう」

 ──見捨てて行くのか!

 雷が落ちるように、ユニスの中で得体の知れぬ群衆の声が鋭く轟き渡った。

 ユニスはびくりとして身体を引きつらせる。

 目が虚空を見ている。

 ノールは反射的に片腕を差し伸べ、ユニスを支えた。

「ユニス様!」

 ユニスはどうしていいのかわからないように、ノールの顔を仰いだ。

「──声が…」

 ノールにも、ユニスの言っているものが何なのかは感覚的に理解できた。

 裁く者を求める重い声。

「ユニス様、今は考えるべき時ではないのです」

 ノールはしっかりとした口調で言った。

 宮廷にいる者の声、庶民の声。

 両方の声を聴いてきたからこそ言える言葉だった。

「今はユニス様が思い悩む時ではないのです。いろいろなものの声を聴いていると、それこそ、無数に枝分かれした道の中心にいるように、何処に行けば良いのかわからなくなってしまう。すべてにおいて良い判断を下せるということは、この世には限りなくゼロに近いのです。そのご判断は、今この時においては、ユリウス様が。宮廷に戻りましょう」