十五の詩




 ノールの手がユニスの手を取ると、触れ合ったその指先から、柔らかな光がすうっと広がった。

 人の声とは異なる、穏やかな声がその光に呼応した。

(我々を救うは誰か)

 物々しい地響きの音がしはじめた。

 地震──ではない。

 自然界に生けるものの、声。鬨の声、それのように。

(人の子よ、そなたは何者だ?その姿に生まれ、我々の声を聴くか)

 声は「人の子」という言い方をした。精霊の声のようなそれに、ユニスは答える。

「人の子とは?」

「そなたのことだ。そなたは何者だ?」

 何者だとは、簡単に難しいことを訊く。

 しかしユニスは何かに導かれるように言葉を紡いで行った。

「私には声が聴こえます。この声は、他の者にも聴こえる声ですか?私はユリウスの子」

「…ユリウスか」

 厳かな声が、やや柔らかいものを帯びた。

「ユリウスはまだ立っているか。我々にとっては喜ばしいことではある。が──良くない波が来ている。ユリウスに。この歪みの標的にされるやもしれぬ。聴いたであろう、お前も。怒りのぶつけようのない者達の呪いの声を」

「何故ですか」

 ユニスは幼い声で──だからこそであるのか、大人が口にはしないことを指摘した。

「父上のせいではないことなのに、父上を呪って、何かが変わるのですか」

「……。ユニス様」

 ノールがユニスの純粋さを憐れむように傍らに立った。

 厳かな声は言った。

「その眼差し、その姿勢、そなたはユリウスのそれを継ぐ。我々の声を聴く。我々はお前を支えよう」

「その声を聴くな!」

 牢獄から罵声が飛んだ。

「わしらの妻や子供は、こやつらが奪いよった!聴くな!わしは呪う。わしらを好きなようにさせてくれなかった大水と大風を!」

 その話に驚いて、だがユニスは、聴こえてくる声に柔らかに尋ねた。

「どういうことなのですか?」

 声は答えた。

「人々の行いの報いよ。何でも巣喰い過ぎれば災いは起きる。自然の災厄となり、それは人に振りかかる。我々は人のような手や足を持たぬ。我々の一部である大水や大風が人の命を呑み込むこともある」

 ノールがその声に短く言葉を添えた。

「自然の理です、ユニス様。大水、大風、地の揺れは人に呪い返すことは出来ません。それらの基に人が生かされているからです」