ユニスは小さな手にセイザーの手を取った。
セイザーはまだ信じられない表情で、だが、しっかりと感じたユニスの手に、これは夢ではない、と確信する。
ユニスたちがセイザーを連れ、歩き出す。呪いのような声が響き始めた。
「…ここから出るのか」
出るのか出るのか出るのか。
わあわあと大きくなり反響しはじめる。
ユニスに向かって、ひとりの囚人が攻撃魔法を放った。ノールがそれを弾き返す。
「ユニス様!」
ユニスはノールとさほど変わらない反応の速さで、跳び退いた。本能だ。
「ユニス」
ファスティーナが庇護するようにユニスの手を掴もうとするが、ユニスは何故かその手をすり抜けてしまった。
「まだ…終わりじゃない」
およそ、子供らしからぬ言葉の響きをさせるユニスに、ファスティーナは我が子ながら、その子の身に何が起こっているのか案じるような眼差しになる。
ユニスは渦のような言葉の想念の中にいた。すがりつくようにまとわりついてくる人々の念。
(怨念?)
何故こんなにどろどろしたものが渦巻いているのか。
人の世界は。
ユニスは牢獄の数少ない明かりのこぼれる方、天窓を見遣って、何故と問う。
この声を響かせる命は何処だ。あふれているのか。何処からというのでもなく、大水のうねり、その轟のように。
ユニスが今にも何処か遠くへ消えてしまいそうな錯覚を受けて、ノールは足を踏み出す。
「ユニス様」
手を伸ばし、幼い主君に触れようとした。
ノールの気遣う空気を感じ取ったユニスは、ノールが触れてくるのと同時に、ノールの面差しを見つめる。


