十五の詩




「私にはひとりの人の声のようには聴こえません。ある群衆の想念が大きな渦を創っているように見えるのです」

「見えるの?」

「はい。私の感覚では」

「見せて」

「あ、ユニス?」

 ユニスはファスティーナのそばを離れ、ノールの手をとった。

「ユニス様…?」

 ノールは幼い王子のふるまいに多少動揺するが、ユニスはノールが先ほど見つめていた視線の先に目を向け、表情を翳らせた。

「怒ってる…」

 ユニスの短い呟きにノールもそこへ目を向けた。

「見えますか?私も同じように思います。あれは暴動の想念です。放っておけば大変なことになる」

 話しながら、ノールはユニスが自分と同じものを見ているのだと悟った。

 ユニスからそれを憂える感情が伝わってきたからだ。

「どうして怒っているの?」

 聡い碧眼をノールに向け、ユニスはそう尋ねた。ノールは首を振る。

「今の段階ではまだ何も。…もしかしたら今から訪れる塔の囚われ人と関係あるのかもしれませんが」

 一行は、ユニスが先刻『同調連鎖』でドミナントの牢へ跳んだ道へ差しかかる。

 ユニスがノールの服の裾を掴んだ。

「ノール…」

「どうしました?ユニス様」

「怖い。『ここから出せ』って言ってる」

 ファスティーナにはユニスの言っていることが理解出来た。

「囚われ人がひとり外に出て連れ出されて行くのを見たから、己の行いは棚上げで我も我もと解放を求める囚人たちがいるのよ」

 ノールが安心させるようにユニスの手を握る。

「大丈夫です、ユニス様。──いかが致しましょう、王妃様。囚人たちは牢の中にいるとはいえ、このまま塔に入って行けば、口々に騒ぎ立てないとも限りません」

「私が黙らせます。ユニスには触れさせません」