十五の詩




 宮廷を出るまでは心のままに振る舞っているようなファスティーナだったが、外に出ると憂うように言った。

「──確かに嘆きの声が聴こえるわね。ユニス、大丈夫?」

 ユニスは同じように聴こえていたことをファスティーナに言われ、こくりと頷いた。

「母上にも聴こえますか?」

「ええ。私は舞台に立っていた者ですから」

「母上は大丈夫ですか?」

「ふふ。優しいわね、ユニス。大丈夫。私の感覚は同調連鎖ではないの。気分は悪くなったりはしないわ。──そうね、職業病のようなものかしら?」

「職業病?」

「特定の仕事を続けていると自然にそうなってしまうような感覚のことよ」

 「行きましょうか」とファスティーナはユニスの手を取った。

 今日は不思議な日だな、とユニスは思う。

 先刻はユリウスと出かけ、今はファスティーナとこうして出かけることになっているとは。

(嘆きの声が聴こえる?)

 ノールは疑問に思った。それはどんな風に?

 ノールには人の想念が大きな渦を創っているように見えた。感覚の違いだろうか?

 考えをめぐらせていると、ユニスがノールを振り返った。

「ノール、お話して」

「え?」

「ノールも何か思ったでしょう?」

(──すごい)

 言葉は幼いが、感情を敏感に読み取っているのだ。

 この様子なら宮廷官吏たちが幼いユニスを相手にいちいち騒ぎたてるのもよくわかる。

 ユニスを陥れたいという動きは、ユニスの持っている感性に対する畏怖だろう。

 いろいろな隠れている物事が明るみに出ないために。