十五の詩




 ユニスは困ったようにファスティーナを見上げた。

「母上。父上は私のことを想ってくださっているのです」

 はっきりした口調だった。ファスティーナはそれに目を瞠る。

「ユニス」

「私が声を聴いた人の他にもうひとり打ってはならない人がいるようです。私がその人を連れて来たらここの空気は良くなるのでしょう?」

 ユニスはユニスで宮廷内の空気を案じているのだ。

 そのことに今まで言いたい放題に言っていた官吏たちも気まずそうに沈黙してしまった。

 ユニスの傍らに控えていたノールが、穏やかな語調で言った。

「ファスティーナ様、恐れながら申し上げます。ユニス様はいずれユリウス様の後を継ぐ方。ユリウス様はユニス様の力が正当な形で誰の目にも評価されるよう、そうなさったのです。王となられる方に必要な資質は愛される人であると同時にどんな罵倒を受けても立っていられる人であることかと。そうあるためには遅かれ早かれユニス様ご自身の力が評価されることが必然となってくるのです。ユニス様に大事なきよう、私がお護り致します。どうか塔に出向くことをお許しを」

 ファスティーナはノールの言葉に心が動いた。官吏たちには見られないユニスに対する忠誠心のようなものが見えたからだ。

 ノールを宮廷にあげたユリウスは、ノールについて多くは語らなかった。だがユリウスはノールのこの資質をも見抜いて宮廷にあげたのだ。そう思えた。

「ノールと言ったわね」

「はい。何でしょうか」

「私も塔に行っていいかしら?」

 気さくな言葉がファスティーナの口から出てくることに、ノールはファスティーナを見つめる。ファスティーナは笑った。

「一緒に行っていけない理由はないわよね?あなたとも話がしてみたいわ」

「お、王妃様…」

「だって心配なんだもの。ほらほら、行くわよ」

 いつのまにかファスティーナのペースである。ノールがユニスの表情を伺うと、ユニスは困ったようなほっとしたような複雑さを浮かべていた。

「母上は心配しすぎです…」

 小さく呟いたユニスに、ノールは苦笑した。



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