十五の詩




 ユニスが罪人を庇い、疑われているという話を聞いて、素直に怒り心頭だったのは王妃のファスティーナだった。

「あんな小さな子が大人の事情のどうこうなんてわかるはずないじゃないの!それを何かあるのだとか目くじら立てる方がどうかしてるわ!しかも私を置いてユリウスとユニスだけ出かけたんでしょ!ずるいわ!」

 と、怒りがややずれた方向へ行っているような兆しも見受けられるのは、ファスティーナがファスティーナだからである。

 手に抱いていたリュールを「ちょっと見ていて」と侍女に任せ、ファスティーナは立ち上がった。

「ユニスが行くなら私も行くわ」

「お、王妃様」

「何!?私はユニスの母です。子の心配をしない母親が何処にいて!?出かけます」

 「王妃様、お待ちを」と侍女の声が追いかけるが、ファスティーナは部屋を出ると颯爽とした足取りで回廊を歩き始めた。



     *



 広間で未だささめきあっていた宮廷官吏たちはファスティーナの姿を目にして声を小さくした。

「これは王妃様──」

 恭しく礼をする官吏たちに、ファスティーナは柔らかい調子で尋ねる。

「何の話をしていたの?」

「──」

 まさか王子の陰口を叩いていたとは間違っても答えるわけにはいかない。ファスティーナは内心その心の有り様に閉口する。

 庶民の出であるファスティーナにはいまいち彼らの考えていることがわからない。否、わかりたくないと言った方がより近い。

 庶民よりも随分といい暮らしをしているはずなのに何故彼らはこうも金や権力にしがみつく生き方がしたいのか──。

 ファスティーナが何か言おうとしたところで、幼い声がした。

「母上」

 案じていた我が子が歩いて来るところだった。

「ユニス」

「どうなさったのですか?」

 ユニスの後方には見習いであるノールと、侍女のアイシャ、武官のバイロン、文官のショーンが見える。

 ファスティーナはそれにまた嘆息する。

「それは私の科白です。何なの、ここには幼い子は幼い子として扱うまともな神経の大人はいないの?ユニス、王様に何か言われたの?また何処へ行くつもり?内容が内容なら私が王様に掛け合います」