ドミナントが来たことに急に不穏になる宮中の空気に、ユニスはいたたまれなさを感じたのか私室に身を潜めてしまった。
この頃にはユニスは宮中に自分をよくは思わない大人がいることを認識するようになっていた。
何をする気分にもなれず、手に抱いた猫のぬいぐるみをふわふわと玩ぶ。やはりユリウスとドミナントのことが気になっていた。
「ユニス様、入ってもよろしいですか?」
ふと、部屋の前で声がした。ユニスは「はい」と答え居ずまいを正す。
入って来たのはまだ年若い男子だった。ユニスはその男子の姿を見たことがあった。
言葉を交わしたことはない。だが一目見ただけで印象に残ったのは、黒髪の者たちの中で彼だけが自分と同じ金髪であったからであろう。
ノールはユニスの前に座し、礼をした。
「ノール・メイエと申します。ユリウス様の命で参りました」
「ノール…」
ユニスは自ら寄って行きノールのそばに座る。興味深そうに見つめ、笑顔がこぼれた。
「──見たことある…」
無垢な瞳は既に好意に近い好奇心を抱いていた。ノールはそのことに思いもよらなかった嬉しさを感じる。
「まだ見習いの身分の者です。ユニス様は私のことをご存知なのですか?」
「父上が前に‘宮中にもそなたと同じ髪の色の者がいる’と。時々見ても、話したくても出来なかった」
ノールの方も同じであった。
ノールにとってユニスは口を利くことも許されない人であるかのように感じていたが、ユニスの方もノールが気になっていたのだ。
「ノールの髪の色はどうして?」
ユニスは何故ノールが此処を訪れたのかを問うよりも先に、そのことを問いかけた。初めて見た時からずっと気になっていたのだろう。
ノールにとってもそれだけが今自分がここに居られる唯一の事であり、そのことがユニスに対する想いに繋がっていた。
「ユニス様と同じです。私の父と母も黒髪でしたが、私だけがこの髪の色に生まれました」
「……」
「そのことで私は周りの者から疎まれていました。それをユリウス様が憐れんで私を宮廷にあげてくださったのです。この国に、このような色の髪を持つというだけで、その者を不幸にはさせたくはないと」


