十五の詩




「マスター、その者から離れてください」

 精霊ユリエの口調は穏やかだがそれ以上に厳しさを含んでいた。

 ドミナントの両手には枷が嵌められていて、鎖で繋がれている。ドミナントはちょっと笑った。

「何もしないよ。出来るわけがない。──おい、お前さん。心配させているぞ。いいのか?」

 ドミナントの方は、かえってユニスに自分からは離れるよう促した。

 ユニスは不安そうにユリエを見たが、ドミナントのそばを離れようとはしなかった。

 遅れて、ユリウスと従者たちがドミナントの牢の前まで来た。

「ユニス!」

「ユニス様!」

 よりによって、テロリストたちを扇動して大量虐殺をもたらした首謀者を庇っているのを見て、さすがのユリウスも表情が揺らぐ。

「ユニス、その者から離れなさい」

 ユリエと言うことは同じである。ユニスは悲しくなった。

「祈ることが間違っているのですか!私は祈りを聴いたのに!」

 ユニスの強い言い様に、ドミナントは困ったように言う。

「何だかよくはわからねぇが俺を庇いだてするなんざ利口じゃねぇぜ。…まぁ、ありがとよ」

「父上に話をしてください!!父上、この人は何もしていません!!」

 ユニスの言葉に、初めてその場にいた全員に動揺が走った。

「何もしていないだと?そんな…」

「現場で扇動しているところを捕らえたのだ。そんなはずはない」

「静かにせよ」

 ざわめき始める従者を制し、ユリウスは牢の前にかがみ込むと、ユニスと同じ目線になった。

「ユニス。そなたの言うことに偽りはないな?この者は何もしていないと言うのだな?偽りがあればそなたもただではおかんぞ」

「はい。偽りはありません、父上」

 質素な着物を着ているが位が高そうな男と幼子とのやりとりを見て、ドミナントは「お前さんは…」と呟いた。

 ユリエがその疑問に静かに答える。

「セレクヴィーネ王家、第一王子。ユニス様でいらっしゃいます」