十五の詩




「──う…」

 鞭の傷で眠れない。座ることも横になることも出来ない。

 ドミナントは虚ろな目で空を見た。

 朝なのか夜なのかもわからない牢獄の中は、何処からともなく呻き声が聴こえる。

 ──と、目の前に突然燦然と光が輝き、ひとりの幼子が現れた。

(な……)

 ふわり。

 幼子は自身が癒しの風にでもなったように、光を帯びたままドミナントを抱きしめた。

(な…んだ…?)

 幼子の抱擁は羽毛のように軽く心地良かった。

 それが癒しの魔法だとわかるまでにそう時間はかからなかった。

 鞭の傷が完全に癒えてしまい、ドミナントは呆気にとられ声を発した。

「おい…」

 幼子はドミナントに寄りかかっていたがゆっくりと身を離した。

「…もう痛くない?」

 優しい声。ドミナントはまだ信じられないといった面持ちだ。

「あ…ああ」

 ブロンドに水色の瞳の天使の顔がほっとしたようにほほえんだ。

 空間を跳躍しドミナントの前に現れた幼子はほっとした様子も束の間、うす暗い牢獄の中をこわごわと見回した。

 どこからともなく聴こえてくる呻き声に表情がこわばっている。

 ドミナントは言った。

「何処から来た?ここはお前さんの来るような場所じゃない」

「…わかりません」

「わからない?」

「父上に祈っていたでしょう?」

(──…)

 何だそれは、とドミナントは雷に打たれたように幼子を見た。

 幼子は幼子らしい面差しで、それ故にドミナントの何かを見抜いているようだった。

「祈る?俺は神か何かを信じているような人間じゃない」

 子供の言葉だとかわそうとすると、幼子はドミナントを真っ直ぐに見上げた。

「でも信じていたから祈ったのでしょう?」

「──お前…」

 何者だ、とドミナントが呟く。そこに少女の姿の精霊が現れた。

「マスター!」

「──駄目!!」

 幼子が庇うように、ドミナントの首にすがりつく。

「打たないで!!」