十五の詩




「王妃様を呼んで参ります」

「いや、ファスティーナ様は飛空魔法は使えない」

「飛空魔法を使える者の方が」

「ユニス様が結界を張っているのだ。飛空魔法を使えて結界を無効化出来る者でなければ無理だ」

 魔導の国リオピアの民にとっても、飛空魔法は高等魔法である。使える者はそう多くはないのだ。

 アイシャが思い詰めたように言った。

「王様なら使えます。王様を呼んで参ります」

「バカを言うな。こんなことで王様を呼んでいたら、一体女官や宮廷官吏は何をしているのだということになりかねんぞ」

「ですが、ユニス様が安心される者でなければ、魔法を使えたとしても説得をするのは難しいでしょう。お咎めがあるのなら私ひとりにあるはずです。呼んで参ります」

 アイシャはそう言い残すと、急ぎユリウスのもとへ向かった。

 しばらくしてアイシャに連れて来られたユリウスはユニスを見て、窓から声をかけた。

「ユニス」

 ユニスは反応し、顔をあげた。幼いながらにユリウスが忙しい身であることはわかっているのだ。

(父上を困らせている)

 何とも言えない罪悪感が広がり、だがユニスは木の上から動けなかった。

 自分ではない者の痛みを聴いていた。

 ユリウスはユニスに、その違和感をすぐに感じとった。

(様子がおかしい)

 いつものユニスなら、もっと素直だからだ。

 ユリウスはふわりと窓を越えると、結界の前まで来た。

 ユニスはびくりとして身を縮める。

「父上」

「結界を解きなさい。それとも壊されたいか」

「……」

 ふっと結界が解ける。だがユニスの心は完全に壁を作ってしまっている。

 どうしたのだ、とユリウスの声が優しくなる。

 ユニスが起こしている状態は、幼い頃ユリウスにもあったことだ。どうふれていいのかは心得ている。

 ユリウスの腕がユニスを抱き上げた。