十五の詩




「きゃああぁぁぁ!!」

 女官の悲鳴があがった。それを耳にした者たちが集まってくる。

「何だ!?何事だ!!」

「ユ、ユニス様が…」

 女官が指差す方角は窓の向こうに見える木である。

 その木の枝、それもかなり上方に、ユニスが座っているのが見えた。

 3階の窓から水平に見えるくらいだから、かなりの高さの木である。落ちるとまず無傷ではすまないだろう。

 そのそばでユリエが困ったようになだめすかしていた。

「マスター、アイシャが心配しております」

 アイシャはついさっきまで、ユニスのそばで絵本を読み聞かせていた女官である。

 他の女官に呼ばれちょっと目を離した隙に、この事態になっていたのだ。

 先日から飛空魔法を使うような兆しを見せ始めていたが、明らかにユニス自身が自らの意志で飛空魔法を使ったと思われるのはこの日が初めてだった。

 ユニスは黙りこくったまま視線が虚ろだ。高い魔力のためなのか、体調が良くないのである。

「マスター」

「──いやっ!」

 ユニスはユリエの手を払いのけた。痛かったのである。

 ユリエが強く掴んだからではなく、ユニスの身体がそうなってしまっているのだ。

 完全に魔力の壁が張られユリエも近づけない状態になってしまった。

「マスター」

「……」

 ユニスはぼんやりと木に寄りかかった。

 このまま軽いショックを与えて気を失わせ、ユリエが抱きとめることも可能ではあるが、それをするには躊躇われた。

 ユリエの行使する力は、ユニスの力であるからだ。その上、ただでさえ弱っているユニスの身体を痛めつけたくはない。

 周りの人間が心配するのはユニスの魔法能力がまだ目覚め始めたばかりだからだ。

 無論覚醒して間もない飛空魔法も、完全に使いこなせるわけではない。

 高い所から落ちる心配があるというのは、それがあるからだ。

 窓辺ではらはらと見守っていた女官と宮廷官吏たちが、話し合い始めた。