黒革の古い洋書。
厚みのあるページは茶色く変色し、表紙の黒革も錆びてすすけた金属のように鈍い光沢を放っていた。

「おじさん、本…落ちてるよ。」

楓(かえで)は奥で将棋を指す初老の男に声をかける。
大型ショッピングモールの駐車場の一画が、フリーマーケット会場となっていた。


陶器や木彫りの民芸品らしき品々が並べられ怪しげな金額の値札が添えられた台の下。
うっすらと砂埃がかかるアスファルトの上に、その黒い本はあった。