しつこく着信を知らせる画面に焦りながらも、デッキへ到着したことで仕方なく通話ボタンへと親指を力をこめて乗せれば。
「――どういうつもりですか」
何時になくシンと静まり返っている通話先から届いたのは、今まで以上にシリアスな男の声音だった。
携帯電話から伝えられる冷たい声音で一瞬ひるみかけたものの、その手にグッと力を入れて自身を奮い立たせた。
「何がですか」
どうにか所望していた無愛想な声を出すことは出来たが。ズキン、ズキンと駆け巡る小さな痛みに、どうしてか早くも負かされた気分だ。
こうして動揺していると気づく時点で、オウンゴールとでもいうのか私の負けだろう。尋ねておいて、あやうく終話ボタンを押しそうだったもの。
それほど先ほど聞かされた第一声が、あまりに効力甚大だったのだ。
いつもの冷淡さとは、一線を画したロボット男の態度が何も読めずに怖い…。
「へえ、随分と勝手なものですね。此方の問いに尋ね返すとは、流石とでも言いましょうか」
沈黙が流れること、たったの数秒。あからさまな溜め息が吐き出されたあとで、再び鼓膜を揺すった声色は皮肉たっぷりな平素の口振り。
「勝手?あ、アナタに言われたくないわ!」
「…どういう意味でしょう」
「そ…、れは」
自分の事は棚に上げきっている彼の態度に苛つき、立場が思いきり下であっても怒りを鎮められなかった。

