そもそも“興味を持つつもりはない”と、契約時点で失礼発言を浴びせたのは誰よ?


この男の真意のさすところはすべて、のちの仕事のプラスへ通じているだけで。少しの期待すら無用だ。


「…はい」

「珍しく素直ですね」


分かっていて、何にも頼りどころは無いと知っているのに。
真っ黒で濁りのない眼と目が合った瞬間、ドキンと鼓動を打つ音は何なのだろうか。


さらに目の前の男は笑顔と優しさすら皆無ときている。初めから分かっていて、どうして此処で私は頷いてしまったのだろうか?


この感情の微かな変化の意味に気づいているし、これまでの経験から分かっているけれど。決して認める訳が無いし、悔しいから認めたくなんてない。


むしろ冷淡なロボット男に対し、この心臓の早鐘がいったい何を求めたいのか不思議で堪らないのだ。



「…もう聞きませんから、お気になさらず。
今後ご心配もお掛けしませんが、お気遣いだけは感謝いたします」

「そうですか」

動揺してすっかり食欲も失せていた中、再びフォークを手にしながらニッコリと余裕の笑みで見返した私。


ただし無機質な眼に探りを入れられないよう、メインディッシュへ視線を落として舌鼓を打つばかり。


その最上のお料理の味など一切分かる筈もなく、モグモグと咀嚼を繰り返すだけ行為はヤケに虚しくて。



なぜ今日は彼について来たのだろうと、密かに後悔し始める自分がひどく情けなかった…。