戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】



変わらず横抱きされている中で、苦悶の顔で紡がれては何も言葉に出来なくて。


むしろこの曖昧すぎる態勢こそ、彼なりの報復行為にも思えてくるほどだ。


――間近にいる愛している男から、目を逸らすことも、逃げ出すことも出来ないのだから…。



この状況下がさらに息苦しく感じるのは。紛れもなく、とても近い彼の想いまでもが伝わってくるせい。


料亭では疎外感を覚えていた過去を知るほど、この想いは断ち切るしかないと思えた。


この無用な想いがなくなってしまえば、彼に同調して上げられるとも感じた私は狡猾だ…。



たとえ朱莉さんの本命が彩人兄であっても。愛する男の本命は、今も昔も彼女と知るのは辛い――



「――だから、違います」


「・・・へ?」

事実に苛まれていた中で頭上から届いたシリアスさを壊す声音が、私の口から間抜けな声が漏れた原因。



「まったく貴方は…、勝手に暴走して結論づけるのがお好きですね。
まあ確かに、あながち間違いではありませんが」

「…、」

散々な言われようの私だけど。結局のところ、彼の言葉の意味が理解出来ずにいる。



なぜこの男の発言は、イチイチ回りくどいのだろうか?――もう素直になって、正解だと言えば良いのに。