同情から偽者にイチイチ構わないで欲しい――と言うより早く、そのままギュッと抱きしめられていた。



先ほど以上に強く感じられる香りと、独特なゆるい温度が体温をまた一層押し上げて。


この腕をどうにか解いて、逃げなければいけないのに非力な涙ばかりが溢れる。



「…まったく、早とちりばかりする人ですね。そもそも俺は、前から何度も言っていたでしょう?

“あなたに嘘はつかない”と――なのでこの場は譲りませんよ」


「っ、し、…知らない。だ、きら…っ、も、いや、二度と…」


心地よい声音のまま、いささか呆れ気味にそう呟くから。


あまりに都合良い甘言に上手く乗せられ、グッと押し寄せる期待を拒否する外ない。


そう牽制したくて“大嫌い”と嘘を吐こうとすれば、自身の涙が邪魔となり声もまともに出ず惨めなものだ。



むしろひと際強められた腕の力に、心が素直に喜んでしまっている。このワガママさは一体、どうすれば良いだろう?


こう心に問い掛けて時間稼ぎをするほど、本当のところは彼の元を離れたくないという答えが出ている。



…ああ、どこまでも弱い心にすがる自分が大嫌い。ロボット男の言葉とおりに、私は昔からまったく成長していないのだから。