想像とはまるでかけ離れた発言で拍子抜けしたのは、もちろん兄だけでない。失恋の事実に泣きかけていた私も、その1人に含まれている。



彼の放った言葉に吸い寄せられるように、どことなく不安な気持ちで小さく顔を上げれば。なぜだか前方の人数が3人から1人減っていたではないか。



その理由が判明するのは、それからわずか5秒後のこと。振り返るまでもなく、後方からすっかり慣れ親しんだユニセックスな香りを感じたせい。


…いや、それだけではなくて。その隙に私の肩へ置かれていた手の大きさが、心の高ぶりをそっと押し上げた。



「あとの話すべきは、怜葉さんにすべてお伝えしたいので――お借りしても宜しいでしょうか?」

「…いや、しかし」

私を飛び越えて話す2人とは、もちろんロボット男と兄であるが。


窺うように前方の兄の顔を見れば、何とも困惑の色を漂わせているではないか。…まさに今のプチ・パニックな私と同じ心境と思われた。



「怜葉さん、行きましょうか」

「…いや、」

「それはこちらも嫌ですね」


「…私はもっと嫌ですよ。何なんですか、いきなり」

「いきなりでは無いでしょう。
少なくとも、彩人さんにお尋ねする間の猶予はありましたよ?」

屁理屈を並べ立てれば今日もまた到底、まったく歯が立たず。


肩に置かれた手を跳ねのけようとすれば、今度はその腕を呆気なく取られる始末。