待ち合わせ相手が相手なだけに、早くても遅くてもダメだとかいう――妙なプライドがさらに気分を落ち込ませる。



「…あれ、怜葉ちゃん?」


「え、悟…くん、どうしたの?」

周囲で珍しいとよく言われた名前をサラリと呼ばれたら、振り返ってしまうのは最早クセ。


それが当たりであったように微笑んでくれている彼の姿に、こちらの方が目を丸くしてしまった。



――先日再会した昔馴染みの悟くんとまさかの再会に、頭の中はさらにパニック度合いが増すばかり。



「うん、実は高階に用事があってね。
今日はこれで終わりだから、ちょっと息抜きに寄ったトコ」


「…悟くんが、ここでコーヒー飲むの?」

「ハハ、面白いこと言うね」


そう言って小さく笑った悟くんは、“隣、いい?”と断りを入れると、私の右隣のスツールへ腰掛けた。



もの凄く失礼とは存じているけども、トレーに載ったブラック・コーヒーを飲むその姿はイビツな気がしてならない。


身につけている物や風貌が異質な悟くんの存在は、この庶民的カフェとどうにも結びつかないのだ。