もちろん一番の疑問を尋ねたいところだが、どうやらこの状況でそれはしない方が良いと結論に至った。



両手で自身を支えながらどうにか後ろへと逃げ、少しでも距離を遠ざけたいと画策するものの、無機質な眼差しがそれを簡単に封じてしまう。


ああ、こうなると何もかも面倒くさく思えてならない。

いっそのことゴロンと寝転んで、不貞寝でもしてみようか。…但し、それが許されればの話であるけども。


半径1メートルの距離間を平気で縮めながら、残された僅かなマイ陣地へも土足で踏み入れる、絶対零度の眼を避けられずにいるから所詮は無理な話。



すなわちまったく歯が立たない状況は誰の眼にも明らかであり、負け惜しみでしかないと分かっているが、真っ白なシーツへ視線を落としてみる。


なおかつ押し問答は過去の戦で負けているため問題外だと、辛くも無言に徹することも潔く決めた。



「黙ればことが済む、と思われますか?」

「…なに、」

やはり思いつきの行動をしたがゆえに、とんでもない方向へと自ら招いた気がする。

そう感じたのは、時間にしてわずか5秒後のこと。



「こうすれば怜葉さんは顔を背けませんが――さてどうします?」

「っ…、」


何よりも冷たい声音が満足そうに室内を占領し、長い指先はクイと容易く私の顎を引き上げたから、それらに屈して狼狽するばかり。