その中においても、やはりロボット男は人目を惹くようだ――何となく悔しいと思うが同時に、さすが高階一族の貴公子さんだと感心した。



「お待ちしておりました、彗星様」

「ああ、どうも」


案内されて向かった先の広々としたホールは、明らかに披露宴会場か何かだろうと見間違いする絢爛さ。


あながち予想は外れていないが、想定以上のそれを受け入れるには時間を要した。


顔が引き攣りかけた刹那、私たちを出迎えた方がロボット男の名を呼べば、その場が連鎖反応のごとく、一気にシンと静まり返ってしまった。


さすがのハレー彗星だ、というボケは此処では必要ないか。いや、またしても空気が重すぎる…。



私の腕を取る彼に促されて中へと進めば、向けられるものは非難の眼差しと、明らかに嫌味ばかりのひそひそ話す声。


それはこうして普通の女が来た理由、どうこうなどではなく。


結婚寸前まで許嫁だった、とても綺麗な朱莉さんを突然に捨てた彼に対する非難も混じっていた。



当該者の私からしても、間違いなくロボット男の行動はオカシイ。私よりも見栄えのする彼女を、表舞台へ挙げればすべてが上手くいくだろうに…。



「朱莉は違いますよ」

「・・・え?」

「まだ信じないのですね」


色々考えながらもヘラリ笑える場面では無いため、どうにか平静を装って無表情で歩いていれば。

ふと、はるか頭上から届いた落ち着いた声音。


無遠慮に声主である隣を見上げれば、漆黒のタキシードよりもさらに真っ黒な瞳と眼がバッチリ合った。