これは年齢が物を言うのではなく、間違いなく如何なる時でも有無を言わせぬロボット男の人格ゆえかもしれないな。



彼は悪びれた様子も皆無に押し黙った彼女へ焦点を置き、明らかに場違いな私の肩をグッと自身の方へと引き寄せたから。


あまりに淡々としたその身勝手な所作によって衝撃に襲われたのは、どうやらキョロキョロ辺りを見渡す私だけではなかったようだ。


その鉄仮面に近い、厚化粧…いや丹念に施されたメイクが剥げ落ちそうなほど。ふふふと口元を歪ませ、恐ろしい引きつり笑いを浮かべたボス。



「どうやら先日は“報告の行き違い”がありましたし、この方が早いかと思ってね」


「え、ええ。専務の仰る通り…、ですわね」

口も性格もすこぶる悪いと、一部の女子社員からは専らの評判だが能力は高い福本さん。


ボスの名に恥じぬポーカーフェイスが常である彼女も、さすがにアイアン製のロボット男には太刀打ち出来ないようだ。


いや、ちょっと待とうか。ココへ連れて来られた理由を教えられていない、当事者な筈の私だけが阻害されて、今も口を挟めずにいるため腑に落ちない。



そもそも不機嫌オーラ満点な彼女のさす、“同行者”とは一体何のことだろうか?それ以前に、“変更”の言葉もまた疑問が生じるばかりだ。


「今後も彼女のこと、よろしく頼みますね」

「っ…、」

ヒントがない状況で次々と忙しなく浮かぶ疑問符に囚われていれば、肩から外れた大きな手はスッと私の手と軽く触れた。


「…かしこまりました」

そのせいかは、定かではないのだが。先ほど以上に明らかな拒否・不満オーラを漂わせるボスの声。


矛先が自分に向いていると分かっていても、どうにも別次元に思えていた。