エクステで上を向いた睫毛に、隙間を埋めきったアイラインにしてもどのパーツも細工と加工バッチリ。


さらに指先は決して派手なネイルでは無く、だけども手入れしてます感を漂わせる上品さは素晴らしいわ。


これだと朝の準備はとても大変なものだろう。彼女の煌びやかさとは正反対に私は、メイクにかけるより睡眠時間を優先したいタイプである。



確かにメイク用品やお化粧品のチェックは好きだけども、基本は面倒がる性質のため普段メイクはいたるところが手抜きも良いところ。


身だしなみを整えることが当たり前、程度では秘書職には足にも掛けられないだろう…。



「緒方さんも、ありがとうございます」

「い、いいえー…」

すると察しが良いらしく、邪(よこしま)すぎる視線へジロリと目を向けてから、それとは対象的な猫かぶりな声音で恐ろしい敵意を向けて来た彼女。



あまりに威圧感たっぷりで、視線を逸らすに逸らせない。

いやいや、きっと逸らした方があとで恐ろしいから、このままで通す方が得策だと苦笑し続けた。



「そこでですね、恐れ入ります専務。
もちろん、差し出がましいと承知のうえでお尋ねいたしますが」


すると馬鹿なものを見るように呆れて視線を移した彼女は瞬時に、コロリとにこやかな表情へと戻す芸当はさながら見物だ。



「何でしょう?」

「ご同行者様を変更なさる、ということでしょうか?」

問い掛け終えた瞬間、またひとつギロリと鋭い視線をコチラへ投げ掛けて来たボス。

眼が合っていないのを幸いとし、今度こそ素知らぬ顔を通すことにする。



「ええ、そのために連れて来たのですが。何か不都合でも?」

「ま、まあ…そうでしたか」


するとどうだろう…、さすがのロボット男というべきか。


ボスの嫌みたっぷりな物言いさえ、淡々とスルーで跳ね返してしまうから、何枚も彼の方が上手だ。