さらに彼チョイスのクリスチャン・ルブタンのパンプスに足を沈めておきながら、これ以上の反論は見当たらないから。


思えば突飛な登場からじわりじわりとだが、心は相当なダメージを負っているに違いない。


あれこれ思考が定まらない中、ロボット男は冷や汗がタラリと流れそうな一室の前で立ち止まった。


あからさまに顔をしかめた私を例のごとくスルーし、二度のノック後にドアノブをガチャリと捻った彼。


その淡々とした所作は表情を元に戻すことも忘れさせ、不意に対峙する羽目となった女性の姿を間抜けな顔で捉えてしまう。



「せ、専務…、どうなさいましたか?」

「ああ、連絡せずに申し訳ない」


その部屋は美人揃いと専らの評判高き秘書室であり、専務の突然の登場に慌てて一礼する彼女たちも何となく不憫なものだ。



何よりも集団の中でもっともオーラを発して尋ねる女性こそ、先日に秘書課のボスと勝手に名づけた福本さんだった。


この男の登場において秘書室から真っ先に出て来るあたりが、他の誰もが彼女に逆らえぬサインだろう。


とにかくどこでも嵐を起こす隣のロボット男は、別段どうでも良いのでしょうけども…。



「緒方さんと行くのであとは頼むと、伝えに来ただけですよ」

「…まあ、そうですの。それはご足労頂きまして、大変申し訳ございません」

やけに丁寧かつ甲高い声音に、不思議と寒気を覚えてしまったが。


今日も見事なフルアップに、厚すぎ…とてもよく塗りこまれたお肌に思わず感心してしまう。